客先常駐

客先常駐(SES)が精神的に疲れる理由13選! | ストレスの対処法3つと辞めたい場合の3ステップ

客先常駐(SES)は非常にストレスのかかる働き方です。

  • 単純作業ばかりで仕事がつまらない…
  • 教えてくれる人がいなくて放置されている…
  • 来月からまた職場が変わる…
  • 休暇を取るにも、お客様と自社の承認が必要

このような状況に置かれることで、精神的に追い込まれ、うつ病になってしまうエンジニアは多いです。

実際に私自身も客先常駐のストレスに悩み、苦しんだ過去があります。

この記事では、以下2点を中心にご紹介します。

  • なぜ客先常駐ではストレスが溜まりやすいのか?

  • どのようにストレスに対処すれば良いのか?

この記事を読み終えた頃には、客先常駐で抱えるストレスの原因が理解でき、ストレスに対処できるようになります。

IT業界はメンタル不調者が多い職種

国の行なった調査『平成29年 労働安全衛生調査(実態調査)』(厚生労働省)を見てみると、メンタルヘルス不調を理由として1カ月以上連続して休業した労働者は「全業界0.4%」であるのに対して、「情報通信業1.2%」 でした。

他の業界に比べて、休業した労働者の数が多いです。

IT業界は客先常駐(SES)をビジネスモデルにしている企業が大半なので、働き方そのものにストレスの要因がある可能性があります。

客先常駐が精神的に疲れる理由13選

なぜ客先常駐は精神的に疲れるのでしょうか?

それには以下13個の原因が考えられます。

  • 現場で放置される
  • 孤独感や疎外感を感じる
  • 単純作業ばかり振られる
  • 現場がコロコロ変わる
  • 新しい現場へ行くために面談が必要
  • 通勤時間が長くなる可能性が高い
  • お客様の職場のため気を抜けない
  • 働き方の自由度が低い
  • 社員よりも立場が弱い
  • 自宅待機をすると給料が発生しない
  • 偽装請負をさせられる
  • 適切な評価を受けられない
  • 所属会社がわからなくなる

それでは詳しく見ていきましょう!

1) 現場で放置される

一人ないしは少人数で客先常駐する場合、頼れる人が周りにいないこともあるでしょう。

自社の社員とはいえ、現場で初対面となることは多いです。ひどい場合には自社の社員がいるのに気づかない場合もあります。

客先常駐では業務契約が短期間であることも多く、「どうせこの人はすぐにいなくなるから必要最低限の関わりにしよう」といったように、深い関わりを持とうとしないメンバーもおり、放置される可能性があります。

2) 疎外感や孤独感を感じる

立場の違いから疎外感や孤独を感じやすいです。

  • 関わるのは他社の社員や顧客
  • 同年代や同期がいない
  • スキルの差が大きい

客先常駐で一緒に働くのは、自社の社員だけではなく、他社の社員や顧客と幅広いです。

そのため自社社員との関わり以上に気を遣ったり、他社との給与格差、顧客からの無茶な要求など、立場の違いを感じる機会が多くなります。

また客先常駐の現場ではベテラン社員の割合が多いこともあり、若手は疎外感を感じることもあります。

私の常駐していた現場では、20代の社員は自分と他社の人間1人でした。

他は年配の社員ばかりで、気軽に相談ができるような環境ではありませんでした。

3) 単純作業ばかり振られる

客先常駐は下請けという立場上、単純作業ばかりさせられることが多いです。

私の場合は当初、「テスターで入って、ゆくゆくは開発や設計に移行できるプロジェクトです」と聞かされていたのに、長期間テスト業務ばかりさせられていました。

  • エクセルをひたすらコピペ
  • 数百台のPCに同じソフトをインストール
  • ひたすらバッチ処理

このような単純作業を延々と続ける現場もあります。

客先常駐が単純作業ばかりな理由は、設計や開発のコアな部分をプロパーが担当するからです。

あくまで外注という立場なので、重要な役割を任せられることはなく、単純だけれども面倒な雑用作業を行う場合が大半です。

客先常駐が単純作業ばかりになる原因の詳細は、以下の記事を参考にしてください。

>>SES・客先常駐ではスキルは身に付かない? | [結論]スキルアップは可能です!

4) 現場がコロコロ変わる

客先常駐は働く現場が短期的に変わることが多いです。

客先常駐の契約は、短いものでは1-3ヶ月、長くても3年ほどで終了するものが多いです。

その理由は、客先常駐が仕事がある時には呼ばれ、仕事がない時には切られるプロパーにとっての調整弁的な役割を果たしているからです。

長期プロジェクトであっても、スキルが足りないだとか、内製化していくだとか、不況の煽りを受けてとか、そうした都合で契約が終了します。

もちろん長期で居られることもありますが、少数派でしょう。(ちなみに私自身は3年半程、同じプロジェクトに携わった経験があります。レコーダーの開発プロジェクトでしたが、当時の同僚に聞いた所、当時は30人近くいたプロジェクトが現在はたった3人に縮小しているそうです)

仕事がなくなる度に契約が切られ、現場が変わる。

正社員という立場なのに、派遣労働のような働き方を強要されるのです。

5) 新しい現場へ行くために面談が必要

常駐先を変わる毎に、SEは面談を行います。

  • なぜうちの現場で働きたいの?

  • どんなスキルを持っていて、なにで貢献できるの?

  • 年齢の割にスキルが少ないけれど、大丈夫?

面談ではスキルをチェックされ、就活のように採用・不採用を顧客から判断されます。

面談に落ち続け、次の現場が決まらなければ、上司や会社からの評価は下がります。

そもそも契約が終了する度に、面談をして、新しい環境で働き、また契約が終了し…と短期間で現場を転々とするのは精神的にも、体力的にも消耗します。

まるで就職活動をしているような質問の応酬を、現場が変わるごとに繰り返さななければならない。

それが数ヶ月〜数年に一度やってくる。

そう考えるだけで、ゾッとしませんか?

6) 通勤時間が長くなる可能性が高い

SEの常駐先は大手企業が多いです。

そうした企業は建物のコストを抑えようと、郊外に施設を構えることが多いため、通勤時間が長くなりがちです。

都会に住んでいても郊外への出勤となれば、1-2時間ほどの通勤時間は普通です。

勤務先が遠いので現場の近くに家を借りよう!

そうしたところで、数ヶ月で契約終了…となれば目も当てられません。

私のいた現場では新卒で入社してきた子が会社近くに引っ越してきたにも関わらず、たった3ヶ月で契約終了となったことがあります。

彼は次の現場へ行くために再度引っ越すことになり、本当に気の毒でした。。

7) お客様の職場のため気を抜けない

「客先常駐=お客様先で仕事をする」ことを意味します。

服装や就業時間、社内ルールなどは、すべて顧客先のものが適用されるため、現場が変わるごとに覚え直さなくてはなりません。

また仕事中は顧客の目があるため、常に気を張って仕事をしなければなりません。

「周りはすべて他社の人間である」ということも多く、気軽に教えてもらえないこともありますし、客という立場を利用して下請けに威圧的な態度を取る社員もいます。

理不尽な扱いを受けても立場上、従わなくてはならないのが辛いところです。

8) 働き方の自由度が低い

客先常駐では、自社ではなく顧客の働き方のルールに従う場面が多くなります。

  • 出勤時間
  • 社内のセキュリティルール
  • 休日・休暇

客先が「リモートOK」「年間休日120日」「出勤時間はフレックス」といった働きやすい環境が整っていればいいのですが、「リモートNG」「年間休日100日」「有給は取りづらい」といった環境の場合、制約が大きいと感じるかもしれません。

働く場所によってルールがコロコロ変わるため、「自由度の高い現場 → 自由度の低い現場」に移った際には、ストレスが溜まる可能性があります。

9) 社員よりも立場が弱い

  • 飲食店のウェイター
  • ホームセンターの店員
  • 介護職員

どのような仕事であれ、サービスの提供者に比べて顧客の方が立場が強い傾向にあります。

客先常駐においても同様で、常駐先社員の方が立場が強い可能性があります。

一緒に同じ目標に向かい、製品作りに励んでいる者同士でありながら、立場の違いによって負荷の高い仕事を任されたり、無茶な要求をされることもあります。

実際に私が働いていた現場でも、「人当たりの良くない方」「仕事のできない方」「コミュニケーションが苦手な方」などを中心に、冷遇されたり、圧迫的な対応をされている場面を度々見かけました。

同じ立場で仕事ができないため、ストレスが溜まりやすいです。

10) 自宅待機をすると給料が発生しない

客先常駐で次の現場が決まらない場合、待機期間が発生します。

国の法律では、雇用主が被雇用者の給与を決定する権限があり、客先常駐企業では待機期間中、給料が60%になることがあります。

「労働基準法26条の休業手当」を適用すると給与を60%までカットすることは認められています。

「君は自宅待機だよね?仕事していないよね?だから給料は40%カットね!」

そう言われると、諦めるしかなくなります。

11) 偽装請負をさせられる

エンジニアの多くは、”準委任契約”で顧客へ常駐しています。

準委任契約は次のような内容を含んでいます。

  • 期間中の業務行為に対して報酬が生じる契約

  • 成果物に対する完成責任はない

  • 発注者にはエンジニアの指揮命令権がない

客先常駐の契約形態の詳細は、以下を参考にしてください。

>>客先常駐(SES)とは? グレーだと言われる理由と3つの契約形態について解説します

この中で特に問題なのが、発注者には指揮命令権がないのに、実態としては権限が付与されざるを得ないという点です。

エンジニアは発注者の現場に行って作業をします。

そこには他社のエンジニアも沢山いて、彼らとチームを組んで作業をします。

そうなるとチームで作業をする以上、誰かがリーダーをしなくてはならず、他社の社員へ仕事を依頼するといった指揮命令が発生します。

他社の社員に仕事を依頼されるといったことは本来NGなのですが、業務の都合上、どうしても発生してしまいます。

今後も業界では違法行為(グレー)として残り続けると思います。

グレー行為だと知っていながら働くのは精神的に苦しいものがあります。

12) 適切な評価を受けられない

頑張っても頑張らなくても、評価が変わらない。

むしろ、頑張らない方が高い評価を得られることがあります。

これは客先常駐というビジネスモデル自体に問題があるからです。

IT業界では人月単価でエンジニアが派遣されます。

契約の中身は「エンジニアを1ヶ月間、140-180時間を50万円で貸し出しますよ」といったものです。

そのため、次のような思考回路になってしまうのです。

顧客側:140-180時間の労働時間なら、エンジニアの料金は変わらない。180時間、目一杯まで働かせよう。

客先常駐企業:140-180時間働いてくれさえすれば構わない。むしろ現場が炎上して、180時間以上働いてくれるなら、超過料金が貰えてラッキー。

ここで問題なのは、エンジニアが仕事の成果ではなく、労働時間でしか評価されていないという点です。

企業としては、無能なエンジニアが無駄な残業をし続けた方がお金が儲かります。

優秀なエンジニアが仕事を効率化するほど労働時間が短くなるので、顧客は喜びますが、自社は喜ばないという構図になってしまいます。

このような事情もあって、ひどい場合には優秀なエンジニアの評価が無能エンジニアよりも低いという事態が発生します。

客先常駐企業としては、エンジニアに長時間働いてもらう方が儲かります。効率性・生産性を重視しない方がお得な場合があるのです。

13) 所属会社がわからなくなる

多くの客先常駐企業では帰社日を設けています。

その理由は、社員に帰属意識を持たせるためです。

客先常駐をしていると、基本的には顧客先の社員として働くことになります。

会社名は顧客企業名を名乗り、働く場所は顧客先。

自分は一体どこの社員なんだ?

そんなジレンマに悩まされる方もおられるでしょう。

自社は給料を中抜きするだけの嫌な奴だ!そんな風に考えている方もおられるかもしれません。

ちなみに帰社日には、バーベキュー、飲み会、ビンゴ大会といった交流会が開催されている会社が多いです。

できるだけ自社への所属意識を持ってもらいたいという、企業側の精一杯の努力なのでしょう。

客先常駐のストレス対処法4選

次はストレスの対処方法について考えてみたいと思います。

対処法は個人レベルでは限界があるため、自社や他社、顧客先社員などの周囲の協力が不可欠です。

客先常駐でストレスが溜まった時の対処法は以下の通りです。

  • 業務時間外・休憩中はリラックス

  • 常駐先の人とコミュニケーションを取る

  • 常駐先の変更を打診する

  • 今後のキャリアについて相談する

1) 業務時間外・休憩中はリラックス

業務時間外にはできるだけ、仕事のことを考えないようにしましょう。

昼食時やトイレ休憩の際にも仕事から離れて、頭の中をリセットすることが大切です。

人間の集中力には限界があって、長くても1時間くらいしか集中できないと言われています。小まめに休憩を取り、リラックスできる環境を作りましょう。

家に帰れば好きなことをして、睡眠時間を確保するのもストレスを減らすには効果的です。

2) 常駐先の人とコミュニケーションを取る

仕事のしやすさは、周囲との関係性で格段に変わります。

どれだけ仕事ができても、相手との関係性が悪ければ提案を受け入れてもらえなかったり、放置されたりとストレスを抱える場面が増えるでしょう。

自ら積極的にコミュニケーションを取ろうとする姿勢が大切です。

3) 常駐先の変更を打診する

ただし、どうしても常駐先が合わないと感じた場合には、自社の営業担当に相談してみましょう。

私も客先常駐時代には、「現場で開発ができない」ことに悩み、別現場への移動を打診しました。

現場が変わることはなかったのですが、客先に対して「こいつに開発をさせてやって欲しい!」と相談してくれました。

その結果、希望の業務をさせてもらえることになり、状況は改善しました。

一人で悩まず周囲に相談することで状況が良くなる可能性があります。

4) 今後のキャリアについて相談する

自社の人間に、今後のキャリアプランについて相談するのも良いかと思います。

企業としてはスキルを身につけてもらって、社員の単価を上げたいと考えています。

スキルアップの相談には前向きに検討してもらえるはずです。

やりたいことや進みたい方向性を考える内に、今の現場で出来ることが見えてくるかもしれません。

第3者の目線で話を聞いてもらうことで、解決の糸口が見つかるかもしれません。

客先常駐を辞めたいと思った時の3ステップ

仕事を辞めることは、人生の大きな分かれ道です。

安易に辞めてしまうのではなく、以下のような段階を踏んでから転職を考えることをおすすめします。

  • STEP1
    悩みを分析する
  • STEP2
    上司に相談する
  • STEP3
    転職を考える

ステップ1:悩みを分析する

まずは今抱えている悩みを整理してみましょう。

  • 給与に不満がある
  • 人間関係がうまくいかない
  • スキルが身に付かない

悩みによって対処方法はまったく異なります。

それらを深掘りして考えることで、客観的に自身を見つめ直すことができ、解決策が見えてきます。

例えば「給与に不満がある」場合を考えます。

問題点:給料に不満がある!

:なぜ給料が低いのだろう?

:会社の評価制度の問題?それとも自身のスキル不足?

:会社の評価制度に問題がある!

:会社の評価制度は変えられる?変えられない場合は転職しかない?

結論:評価制度は簡単には変わらない。給与を上げるための最善柵は転職かもしれない

このように自ら問いを立て、答えを出していきます。

思考の断片は頭の中に散らばっているため、紙に書いたり、エディタに打ち込むなど目に見える形に変換すると整理しやすいです。

ステップ2:上司に相談する

悩みが整理できたら、上司に相談してみましょう。

何に悩んでいて、どのように対処して欲しいのか?

要望が正当なものであれば、周囲の協力があっさりと得られる場合も多いです。

スキルが不足しているならば、どのような環境であれば希望のスキルが磨けるのかを相談します。

給料に不満があるのであれば、実績を伝えて適切に評価してもらえるように依頼します。

たとえ要望が通らなくても、現状を整理し、改善のために行動したという納得感はあなたの中にしっかりと残ります。

ステップ3:転職を考える

どうしても解決が見込めないなら、転職も視野に入ってきます。

ただし、いきなり辞めるのではなく、戦略的に辞めることをおすすめします。

私は次の仕事を決める前に逃げ出した経験があります。

転職活動を始めてから自分の市場価値の低さに気づき、理想からの軌道修正を余儀なくされました。

また一度辞めてしまうと給料が入らなくなるので、焦って転職先を決めてしまう危険性もあります。

転職をするに当たってはじめにすべきことは、「自分の市場価値を把握すること」なのだと思います。

以下の記事では、私の転職活動の記録と転職活動の方法を具体的にご紹介していますので、参考にしてみてください。

>>客先常駐(SES)から抜け出した転職活動の記録【自社開発 or 受託SIへの転職ログ】

最後に

今まで述べてきたストレスは、客先常駐で働いている限り逃れることは出来ません。

違和感を感じたが最後、気持ちは雪玉のように積もり積もっていくに違いありません。

そしていつかは爆発し、転職というカードを切ることになるでしょう。

自社開発、受託開発だけでなく、ITを活かせる仕事は社内SE、プログラミング講師、ITコンサルタントと多岐に渡ります。

もしどうしても客先常駐に向いていない、辛いと思ったら、別の方向に舵を切るのもありだと思います。

私自身も2度の転職活動をしており、客先常駐→受託開発(自社)→運用・保守(自社)と働き方を変更してきました。

この世に職業は無数にあって、私たちには職業選択の自由があるのですから、恐ることはありません。