- 客先常駐で帰属意識が持てなくなる理由
- 客先常駐でも帰属意識が持てる会社とは?
- 帰属意識を高める対策案
会社への所属意識は、仕事のモチベーションに直結します。
マズローの5段階欲求説が示すように、人間にとって「生理的欲求」「安全の欲求」「所属と愛の欲求」「承認の欲求」「自己実現の欲求」は非常に重要です。
この記事では「客先常駐で帰属意識が持ちにくい理由」を中心に解説していきます。
帰属意識が持てない理由を知ることで、どのような会社で働けば良いかを理解できるようになります。
客先常駐で帰属意識が持てなくなる理由
客先常駐エンジニアにとって、「帰属意識が持てない」「自社に愛着が湧かない」という悩みはつきものです。
次第に「会社が嫌いだ」「会社にいる意味が分からない」といったネガティブな感情に変わっていくことは少なくありません。
帰属意識が持てないと言われる理由は、次の8つです。
- 自社との関わりがない
- 現場がコロコロ変わる
- 評価制度が不透明
- 希望の仕事ができない
- 会社行事を強制される
- 客先社員との格差
- 帰社日に意味を見出せない
- 会社のビジョンに共感できなくなる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1) 自社との関わりがない
客先常駐で働く場所が、自社ではなくお客様の職場です。
基本的には現場に出社し、「自社へ帰るのは月に1度の帰社日だけ」というのも珍しくありません。
現場に愛着が湧いてくる一方で、自社への興味は薄れていきます。
- 自社のエンジニアは名前と顔が一致しない
- 現場の社員の方は親切だ
その結果、自社へのネガティブな想いが蓄積していきます。
2) 現場がコロコロ変わる
客先常駐では、定期的に案件や現場が変更されます。
プロジェクトが終了すると次の現場へ移動する。
このような流れになるため、短期間の案件が続くと「職場に馴染むまでに移動を繰り返す」ことになります。
- 職場ごとに変わるルール
- 通勤経路の違い
- 新しい人間関係
このような変化は、転職や部署移動と同じくらいのストレスを伴います。
同じメンバーと仕事をする機会は現場が変わるとほとんどなく、次第に「自分はどこの会社に所属しているのだろう?」といった気分になっていきます。
このような状態では、帰属意識を持ち続けるのが非常に難しいです。
3) 評価制度が不透明
客先常駐企業では、評価制度が曖昧なことが多いです。
主な理由は、現場に評価する人間がいないため、適切な評価をするのが難しいからです。
これはつまり、「評価する者がいないにも関わらず、評価が決定される」ことを意味します。
評価の指標にするのは、資格の有無や勤務態度勤続年数などで、これらは現場でのパフォーマンスを考慮に入れない評価方法だと言えます。
顧客に貢献し、頑張っているエンジニアほど「会社は自分の頑張りを理解していない!」という怒りや不満が蓄積していく。
頑張っても頑張らなくても変わらないと思わせる評価制度が、エンジニアのやる気を奪っていくのです。
客先からエンジニアの評価を聞くこともできますが、正しい評価を教えてもらえるかは怪しいです。
客先常駐の契約は「140-180時間、エンジニアを50万円」で貸し出すといった中中身になっていることが多いです。
仮に「彼は優秀で単価以上の働きをしてくれています!」と伝えてしまうと、単価交渉の材料として使われてしまいます。
客先としては安い単価で優秀なエンジニアを使いため、適切な評価を自社に伝えてくれる可能性は低いです。
4) 希望の仕事ができない
客先常駐では高スキルエンジニアでない限り、希望の現場で働ける可能性は高くありません。
- たまたま現場Aで社員が辞めた
- 炎上プロジェクトの火消しをしてほしい
SESは案件ガチャと言われるように、タイミングや運で働く場所が決定されてしまいます。
たとえ理想のキャリアパスを思い描き、努力してスキルを身につけたとしても、望む現場に配属されるかはわかりません。
- 社員の希望を聞いてくれる
- キャリアパスを実現する案件を持っているか
このような企業でない限りは、延々と同じ仕事をさせられたまま、スキルが身につかずに歳を重ねる….といったことにも成り兼ねないので要注意です。
定期的な飲み会や社員旅行を企画している企業も存在します。
毎月の給料から開催費を天引きされるなど、参加を前提にしている場合も多いです。
百歩譲って、周りが仲のいい同僚であれば楽めるでしょうが、普段は顔を合わせず、コミュニケーションも取っていない人たちと交流することに意味があるのでしょうか?
普段からコミュニケーションを取れる環境でないと、帰属意識を高めるのは難しいのではないかと思います。
6) 客先との格差
- フレックス制度が導入されていない
- 同じ業務をしているのに給料が低い
- 休暇が少ない
常駐先と自社とのギャップに悩む方もおられるでしょう。
特に常駐先は自社よりも金銭的に余裕のある企業が多いです。同じ職場で、同じ仕事をしているのに待遇に差があるとなれば、モチベーションは低下し、帰属意識を持つことは難しくなります。
自社で働いている場合、同僚や上司に給料の話などは聞き辛いですが、客先で働いているのは他社の社員です。社内よりもざっくばらんに会社のことを話しやすいのです。
その結果、周囲との差を感じやすくなり、自社への帰属意識は高まりにくくなります。
7) 帰社日に意味を見出せない
客先常駐企業は帰社日を設定している場合があります。
帰社日の目的は、会社への報告、勉強会、交流会が主になります。
一見、実りのある時間に感じられますが、その実態は無駄話をしたり、現場の仕事とまったく関係のない技術を学んだり、「これって本当に必要?」といった内容が多いです。
また企業によっては、平日は客先での仕事がある為、休日に出勤させられることもあります。
貴重な休日に意味の感じられない仕事を強制されることで、自社への帰属意識は次第に低下していきます。
帰社日とは、「客先常駐社員が自社に帰る日」のことを指します。
現場で通常業務を行ったあと、時間外に帰社する場合が多いです。
8) 会社のビジョンに共感できなくなる
- エンジニアの為になる会社を作りたい
- 自社のオンリーワン製品を作る
- 他社には真似できない技術力
いくら素晴らしい企業理念を掲げていたとしても、客先常駐企業の行っていることは派遣会社とさほど変わりません。
エンジニアを商品として、労働力を提供する。
たとえスキルがなくても、エンジニアを沢山送り込むほど儲かるビジネスモデルになっています。又、客先常駐企業の目的は市場の調整弁的な機能を果たすことにあります。
エンジニアは会社の商品である。
高スキルのエンジニアは利益率が高く、低スキルのエンジニアは利益率が低い。薄利多売か厚利少売で利益を上げるかの違いに過ぎません。
エンジニアが辞めると利益は落ちますが、また新しい商品(エンジニア)を雇えばいいだけのこと。
人間を右から左に流すというビジネスモデルがエンジニアのモチベーションを低下させ、企業のビジョンに共感できない要因だと感じています。
客先常駐でも帰属意識が持てる会社とは?
ここまでは、なぜ客先常駐で帰属意識が育たないのかを解説してきました。
確かに客先常駐では帰属意識を持つことは難しいですが、中にはモチベーション高く、生き生きと働ける企業も存在します。
そのような会社には、一体どのような特徴があるのでしょうか?
- チームで客先に常駐している
- 自社開発・自社サービスへの積極的投資
- 評価制度・キャリアパスが明確
それでは一つずつ見ていきましょう。
① チームで客先に常駐している
複数人で客先に常駐することで、帰属意識が高まります。
私自身、単独で常駐させられた経験がありますが、困ったときに助けてもらえなかったり、孤独感を感じたりと、非常に辛い思いをしました。
同じ会社の仲間と働ける環境は、気楽に相談ができたり、協力を得やすかったりするので、モチベーションを保ちやすいです。
チームで現場に入れるような会社は、元請けや2次請けといった立場であることも多いので、年収も比較的高い傾向にあります。
企業選びの際には、お客様から直接案件を請けているかを判断ポイントにすると良いでしょう。
② 自社開発・自社サービスへの積極的投資
「自社のサービスを生み出していこう!」といった気持ちが企業にあれば、帰属意識は持ちやすくなります。
客先常駐はあくまで「顧客の仕事を請け負っているだけ」なので、本当に重要なポジションに就くことや深い情報に触れる機会になかなか恵まれません。
その点、自社サービスがあると具体的なキャリアパスをイメージしやすくなるのに加え、長期的な目線でポジションを獲得していけます。
またスキルを高め、自社サービスに貢献することで、企業への帰属意識は高まっていきます。
③ 評価制度・キャリアパスが明確
参照:パーソル総合研究所 ITエンジニアのキャリア不安1位は自分の技術やスキルの陳腐化で46.5%
ITエンジニアが企業へ入社する決めてとして、次の項目が大きな割合を占めています。
- 成長できる環境だと感じたから (40.4%)
- 技術を伸ばせる環境だと感じたから (38.3%)
- 選考で自分のスキルをしっかりと見てくれたから (30.3%)
この結果から、エンジニアは「スキルを磨ける環境」、「スキルを評価される環境」を重要視していることが読み取れます。
- 将来へのキャリアパス
- 明確な評価制度
- 技術力を伸ばせる環境
このような特徴を持つ企業では、エンジニアは帰属意識とモチベーションを持って働くことができるでしょう。
帰属意識が持てない場合の対策
客先常駐で帰属意識を持てない場合、「所属している会社」に問題があるのかもしれません。
解決策を3つご紹介します。
- 自分のスキルアップの為だと割り切る
- 客先常駐の優良企業に転職する
- 自社開発企業に転職する
① 自分のスキルアップの為だと割り切る
帰属意識が持てない環境だと割り切って、スキル磨きに集中することをオススメします。
例えば、プログラミングができない環境であってもコードを読む機会があるかもしれません。その際、現場でしか得られない貴重な知識や経験があるのだと捉えられるかで、後々の技術レベルに大きな差が出ます。
スキルさえ身につけば、転職や希望する現場現場への移動も行いやすくなるでしょう。
エンジニアは技術力が重要視される世界です。
将来の選択肢を増やす為にも、貪欲に今の環境から吸収していきたいですね。
② 客先常駐の優良企業に転職する
客先常駐を行なっている企業は無数にあります。
昨今はYoutubeやWebサイトなどで、内情が暴露されている為、ネガティブな印象を持っている方も多いでしょう。そのため企業は、待遇アップやエンジニアの要望に応えようと社内改善に取り込みつつあります。
現在の会社にそのような意欲がないのであれば、変革に前向きな企業に転職するのもありです。
- エンジニアを主体にした社内制度
- 1、2次請の割合が大半を占めている
- 客先常駐以外の事業も展開している
- 30代、40代の社員が多い
- 人事評価が明確で幅広いキャリアを選択できる
このような特徴を持った企業は、社員が働きやすい、希望の持てる環境である可能性があります。
③ 自社開発企業に転職する
自社開発をしている会社だと、転勤が少なく、同じメンバーと長期的に働くことができます。加えて自社製品を販売している場合、ユーザーからのダイレクトな声を聞くことも出来ますので、モチベーションも保ちやすいです。
私自身も社内開発企業で働いた経験がありますが、客先常駐よりも圧倒的に帰属意識を持って仕事に取り組めていました。
以下の記事に自社開発への転職方法を記載しています。
http://runaway-ses.site/job-change-ses
http://runaway-ses.site/unofficial-decision
最後に
この記事のポイントをまとめると、以下の通りです、
- 客先常駐では帰属意識が持てない理由とは?
- 規約先常駐で帰属意識が持てるのは、どんな会社?
- 帰属意識が持てない時の対策について
また帰属意識は一見なくても問題ないように思われますが、個人のモチベーションに直結する重要な要素なんだと思います。
- この会社に貢献したい
- この人の役に立ちたい
- あの人のようになりたい
もう一度、帰属意識がモチベーションに与える影響について見直してみるのはいかがでしょうか。