正社員として雇われたはずなのに、自社にいる機会はほとんどない。
仕事場所は顧客企業だし、自分は一体どこに所属しているのだろう?
客先常駐は正社員であるのに働き方は派遣社員と変わりません。IT業界を目指している方は、仕組みを理解した上で入社する必要があるだろう。
今回は客先常駐の働き方について考えてみたいと思う。
そもそも客先常駐とは?
字面の通り、お客様先に常駐して働く労働形態です。
雇用されている企業から顧客先へ出向して作業を行います。自社に戻る機会は月に1回の帰社日や書類提出をする時だけ、というのも珍しくはありません。
客先常駐と派遣労働の違い
本来、客先常駐は派遣労働とはまったく同じではありません。ただ、実態としては変わらない状態になっている。
それぞれの特徴は以下。
客先常駐
- 派遣先が決まらない場合も給料は保証されている
- 指揮命令権は雇用している企業がおこなう
- 請負や準委任で契約が締結されている
派遣
- 派遣先が決まらなければ給料は出ない
- 指揮命令権は顧客先企業がおこなう
- 多重派遣は禁止されている
SES契約なのに、中身は派遣契約
指揮命令権がおかしい
客先常駐では本来雇用主が指示を出さなければならないが、実態は異なっている。
IT業界の仕組みとしては、ユーザーがSIer(システムインテグレーター)に仕事を発注し、SIerは「SES企業=下請け」に仕事を発注する構図になっている。
ユーザーから発注を受けたSIerは様々な企業からエンジニアを引っ張ってくるのだ。
働く現場はユーザー or SIerになるのだが、プロジェクトの人員は多数の会社からの寄せ集め部隊となる。
彼らがチームを組んで仕事をする以上、いずれかの会社の人間がリーダーとなり、業務の指示を出すことになりますよね。そうなると必然的に雇用主以外の人間から指揮命令を受けることになるのです。
結果、契約内容は形骸化していると言える。
他社の人間との間で指揮命令を行うことができないはずの、請負契約・準委任契約において、指揮命令権が行われていることは偽装請負が行われていることを意味しているのです。
休暇を取るために、客先と自社の双方から許可が必要だったりするのも本来はおかしい。
事前面談はやってはいけないNG行為
客先常駐と派遣社員が勤務先を決める流れとしては、常駐先の担当者と面談し、条件などについての話をして、契約となる。
だが、あまり知られていないけれど、客先常駐(SES)の際に行う事前面談は違法行為です。
事前面接、事前面談、職場見学、職場訪問とは、日本において、労働者派遣法と職業安定法で禁止している特定目的行為である。
派遣労働者を派遣先に派遣する行為は、派遣元による労働者の配置にほかならない。したがって、その派遣先に誰を派遣するかを決定するのは雇用関係のある派遣元である。派遣先が労働者の配置に関与しうる事前面接(顔合わせ、職場訪問、説明会)や、履歴書・スキルシートなどを用いた派遣労働者の特定は禁止されている。
参考:事前面談
派遣社員に対して、派遣元が能力で選別することはできない。
そのため、「面接」ではなく、「打ち合わせ」と称してこれらの行為が行われることもあります。
正社員として雇われているのに…
正社員として雇われているはずなのに、契約が切られる度に面談を受けなければならない。しかも自身のスキルを顧客にジャッジされて、採用・不採用が決定される。
3-6ヶ月ごとにプロジェクトが変わることも多いため、毎回の面談がエンジニアにとって苦痛の種になっているのは間違いないでしょう。
エンジニア側からすると面談は避けたい所ですが、SESという形態で働く以上、避けることはできないだろう。
最後に
客先常駐では正社員であるにも関わらず、実質的には派遣労働と同じような働き方になると知っておいた方がいい。
自社で働けると思っていたのに、いざ蓋を開けてみたら数ヶ月ごとに各地を転々とすることにもなりかねない。実際周囲を見渡してみると、スキルが低い人やコミュニケーションが苦手な人などは、異動の回数が多いように思う。
客先常駐のデメリットに気づいた場合、転職を考えるのもありだと思う。