将来設計を考える際、出世できるか否かは重要な要素である。
客先常駐(SES)では出世が見込めない可能性が高い。
どんな業界であっても、出世できる人・出世できない人がいるのは当然だけれど、客先常駐ではより現状維持に留まる可能性が高くなる。
これは働き方の構造自体に問題があるからだ。
今回は客先常駐(SES)と出世について考えてみたいと思う。
通常の会社員との違い
客先常駐について考える前に、一般的な正社員の出世ルートについて少し考えてみたいと思う。
新卒で正社員として入社すると、適当な部署に配置されて経験を積んでいく。
上司からの指導を受けながら、数年も経てば一人で仕事をこなせるようになるだろう。
その後は部下の育成や責任のある仕事を任されながら、時には様々な部署への異動経て、経験を積み重ねていく。評価は上司によって行われ、仕事のできる人材は昇進の機会に恵まれるかもしれない。
もちろんこのような綺麗なルートで会社員人生を遅れる人は少ないのかもしれない。
ただ、ルートが存在しているという事実が重要なのである。
ここで大切なことは以下の3点。
- 人材育成の機会が与えられること
- 様々な仕事を経験できること
- 評価してくれる上司が身近にいること
である。
客先常駐の問題点
人材育成をする機会がない
常駐先では、自社の人間が自分一人しかいないことも多い。他社の人間とチームを組んで働く機会はあれど、彼らは上司や部下ではない。
後輩がいても育てる義理はないし、育ててもらえる可能性も低い。わざわざ他社の人間に労力を割いてくれる親切な人間は多くないからだ。
・後輩が入ってきたら仕事を教える
・上司から仕事を教えてもらう
そんな当たり前の環境が与えられないため、会社員としての基本が身につきにくい。
与えらえる仕事は単純労働ばかり
常駐先で与えられる仕事は単純労働になりがちである。
・ひたすらエクセルに値を打ち込んでいく
・何百台とあるPCに同じソフトをインストールする
・リモコンが操作できるか確かめる
といった作業を毎日し続けることになるかもしれない。
常駐先によっては、単純作業だけでなく開発や設計といった経験値が積める仕事を頂ける場合もあるが、結局は運次第になる。
たまたまお客さんがいい企業であればよいが、ハズレを引いてしまうと何年も同じ仕事ばかりを振られることになる。
これは、工場で刺身のつまをひたすら乗せていく作業に似ている。
言い方は悪いが、単純作業ではスキルが身につかず、他者との差別化が難しい。
1時間に10個乗せれたつまを12個に出来た、というくらいしか違いが出せない。これは仕事ではなくて、作業である。
仕事は様々な経験をしたり、知識を得る中で出来るようになっていくものだ。
仕事を効率化するための仕組みや新しい製品を製造するといった、「考える力」「創造する力」、「解決する力」が必要になる。
こうした経験が単純労働では得難いため、歳を経るごとに市場が求めるスキルと本人のスキルに乖離が生まれてしまう。
評価してくれる人が仕事を見ていない
仕事をする環境に上司がいない場合、適切な評価が受けられない。
評価する人が自分の仕事ぶりを見ていないのに評価出来るわけがないからだ。
なので、客先常駐では「資格」や「残業時間」で評価されることがある。資格を持っていれば手当が貰えたり、残業時間が多ければ頑張っているとみなされる。
もちろん資格を取るのは大切だけれど、直接の仕事ぶりは何一つ評価に入っていない。業務を効率化して顧客に貢献したところで、給料を払う自社からの評価が得られなければ出世は望めない。
自社開発をしている企業であれば、将来性も見込める
もしあなたの会社が客先常駐だけではなく、自社開発もしている会社ならば出世が見込めるかもしれない。
「客先常駐=派遣」と同じような働き方なので、SESだけを行っている企業にはそんなルート自体が存在していない場合がほとんどである。
自社開発がある場合、スキルを身につけて新製品を開発できれば、認められて出世できるかもしれない。ただし、要望のヒアリングや設計といった知識が必要になるため、スキルの誤魔化しが効かない厳しい世界だと考えておいた方がいいと思う。
最後に
客先常駐が出世から遠ざかる理由をまとめると、
- 人材育成の機会が与えられないこと
- 様々な仕事経験をするのが難しいこと
- 評価してくれる上司が身近にいないこと
となる。
私個人の意見としては、若い内から客先常駐という働き方を選択するのはオススメしない。
常駐先に自分だけだと独りよがりになってしまったり、上司から適切な指導を受けられないからだ。
特に若い頃は優秀な上司から刺激を受けたり、エンジニアの基本を学ぶことが重要だと思う。我流で勉強するのもいいけれど、他者と比較する機会が少ないと井の中の蛙にもなりかねない。
他者に揉まれながら、スキルを積み重ねていく方がいいでしょう。