- 客先常駐とは?
- 客先常駐のメリットが知りたい
- 未経験でもエンジニアになれる
エンジニアの働き方の代表格が、客先常駐です。
この労働形態に違和感を覚えたり、ネガティブな印象を覚える方もいますが、実際には「エンジニアと常駐先の相性」や「業務内容のミスマッチ」が要因かもしれません。
また客先常駐という働き方自体に問題があるのではなく、「どのような働き方かを理解せずに働き始めてしまった」ことも原因の一つでしょう。
この記事では、「客先常駐の働き方とメリット」について解説していきます。
客先常駐とは?
客先常駐とは文字通り、お客様のオフィスにエンジニアが派遣されて作業をする働き方です。
業務を依頼してきた会社の一員として、仕事を行います。
そもそもなぜ、仕事を外部に依頼するのでしょうか?
- 急な大規模ソフトの開発が始まる
- 技術力を持ったエンジニアが社内に不足している
このようなIT業界を取り巻く状況が関係しています。
現代はIT化が進み、常に新しいツールが生み出され、アップデートされていく時代です。
しかし、産業革命時に工場労働者が不足したのと同様に、IT技術を持ったエンジニアは不足しています。さらに、IT業界ではプロジェクト単位で開発が行われる為、一定期間のみエンジニアを必要とする会社が多いのです。
「必要なときに必要なだけ」のエンジニアを確保したい
このような要望を満たすために、客先常駐の仕組みが生み出されました。
エンジニアを必要としている企業に対して、エンジニアを派遣するサービス(=SES(System Engineering Sevice))を提供する企業の一員となること。
これが客先常駐です。
SESとは?
ソフトウェアやシステムの開発・保守では、納品したシステムへの報酬が一般的に支払われます。
しかし客先常駐では、「派遣したエンジニアのスキル」に対して報酬が支払われます。
エンジニアの派遣元は例えば、「エンジニアのAさんを1時間1万円で貸し出しますよ」といった契約を派遣先企業と結びます。仮にプロジェクトが失敗したとしても、派遣さえしていればAさんの貸し出し料金を受け取ることができるのです。
この契約形態は準委任契約と呼ばれており、成果物の完成責任がある請負契約とは異なります。
請負契約ではプロジェクトが失敗した場合、顧客からの報酬を受け取れない可能性があります。
またSESでは、あくまで常駐先企業で仕事を行うスタイルであるため、エンジニアの指揮命令権は派遣元企業に帰属します。そのため、労務管理や業務進捗は自己裁量で行わなければなりません。
一般労働者派遣では、指揮命令権が派遣先にありますので、その点がSESと異なります。
客先常駐のメリット
客先常駐エンジニアは、顧客の要望を叶えることが目的です。
顧客は来てくれたエンジニアに期待しており、責任感を持って業務に取り組まなければなりません。
常に顧客の目を気にしなければならないプレッシャーはありますが、自社で働くエンジニアとは異なるメリットも多いです。
人間関係、残業、得られるスキルを中心にメリットを解説していきます。
1) 人間関係
1. 自社以外のエンジニアと関われる
自社で働いていると、同じメンバーで仕事をし続けることになります。
しかし客先常駐だと短くて1-3ヶ月、長くても3年程度で現場が変わるため、沢山の人たちと関わることができます。
スキルの高い人からの学びを得られると、伸ばしたいスキルや得意分野を把握できます。また人脈ができれば、将来起業する際に生かすことも可能です。
人との触れ合いが刺激となり、自身の成長へと繋がっていくのです。
2. 人間関係に長く悩まされない
人間関係が上手くいかない場合、「配置転換の希望」や「会社を辞める」、といった選択肢を思い浮かべるかもしれません。
ただ、部署異動であれば、噂が社内に広まるリスクありますし、辞める場合には面倒な手続きや転職活動が待ち構えています。
いずれにしても、簡単に取れる選択肢ではありません。
その点、客先常駐は「働く現場を変えてもらうだけでいい」という気楽さがあります。
現場は、自社以外の人たちで占められていることも多いため、現場を離れてしまえば関係性はなくなります。
新しい現場では初めての人ばかりなので、簡単に環境をリセットすることができます。
嫌な気持ちを抱えながら働き続けるのではなく、気軽に働く場所を変えられるのは大きなメリットだと思います。
2) 業務時間
1. 残業が少ない
2019年4月から始まった働き方改革により、特に大手企業に常駐する場合は、残業時間が少なくなる傾向にあります。
- 会社で連日寝泊まりする
- 終電がなくなったのでタクシーで帰る
このような働き方をしていた時代もありましたが、エンジニアの働く環境は少しずつ改善に向かっています。
実際、年配の同僚に聞くと、昔は終電帰りや会社への寝泊まりが当たり前だったそうです。
しかし私自身、大手企業に常駐していた経験がありますが、残業は月に数回ある程度でした。
現状としては、エンジニアの需要はあるにも関わらず、供給が追いついていません。
優秀なエンジニアを確保する為に企業は必死です。
待遇改善はもちろん、休暇制度を整えたり、残業を少なくしたりと、労働者に優しい環境を作ることで、エンジニアを呼び込もうとしています。
今後もその流れは加速していくことでしょう。
3) 得られるスキル
1. 幅広い業務知識が身につく
客先常駐では、プロジェクトが変わるごとに異なった製品に関わることができます。
SES企業が持っている案件の数だけ選択肢があるため、興味のある製品やプログラミング言語を選択することが可能です。
自社で働く場合には、ある程度決まった言語を使い続けることが多いでしょう。
幅広い言語や製品作りに携われるのは、客先常駐ならではのメリットだと言えます。
またプログラミングやIT技術の研修を導入している常駐先もあります。
スキルアップを目指す場合、研修が充実した企業を選ぶのがおすすめです。
2. 様々な職場経験を積める
客先常駐では、自社開発企業のように一つの企業で長期間働くことはありません。
その結果、様々な企業のノウハウや職場経験を積むことができます。
特に若い頃は、”自分のこと”がよくわかりません。
- 何が得意で、何が苦手なのか
- どのような人たちと働きたいのか
- どのようなスキルを身につけたいのか
自身にとっての最適解がわからないのです。
これらを理解するためには、様々な経験を通して、失敗や成功の経験値を積み上げていくことです。
また、企業ごとの開発手法や技術に触れられるのも大きなメリットでしょう。
大手企業に常駐できれば、大手の持つノウハウが得られます。
4) 採用
1, 未経験でも採用されやすい
エンジニアは技術職のため、本来はITの前提知識が必要となります。
メーカーの技術者になるためには、大学で専門知識を学んだり、趣味でプログラミングをしていたり、といった知識やスキルが必須になります。
そのため、職に就くためのハードルが高く、一人前になるまで時間がかかります。
しかし、客先常駐(SES企業)のエンジニアは全くの未経験であっても採用されやすいです。
現場のOJTで教育していくというスタイルが多く、文系かつプログラミング経験がなくても、「やる気・将来性・意欲」が伝わると採用されることは難しくはないでしょう。
私自身も「文系大学出身」、「25歳」、「プログラミング経験なし」でIT業界に飛び込みましたが、雇ってもらうことができました。
客先常駐は、「スキルや知識はないけれど、ITの仕事がしたい人間の受け皿」的な役割を果たしています。
幅広く門戸が開かれていることは、大きなメリットと言えるでしょう。
最後に
客先常駐のメリットをまとめると、以下の通りです。
- 自社以外のエンジニアと関われる
- 人間関係に長く悩まされない
- 残業が少ない
- 幅広い業務知識が身につく
- 様々な職場経験を積める
- 未経験でも採用されやすい
客先常駐の最大のメリットは、経験が少ない人にとっての受け皿的な役割にあると思っています。
未経験者であっても情熱や将来性をアピールすれば、エンジニアとして働く機会が得られること。
新しい分野に挑戦をしたい方にチャンスを与えるという側面には感謝したいと思います。
ただし物事には、必ず光と闇が存在します。
メリットとデメリットがあり、それらを比較した上で、どのような選択を行うかを考えた方が良いでしょう。
以下の記事では、客先常駐のデメリットを紹介しています。
みなさんにとっての”理想”のエンジニアライフに役立てて頂ければと思います。